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聖書のつまらない箇所でも読みたくなったユダヤ民話「花嫁と死の天使」~トビト記風味・サマエル・エリヤ出演~

ユダヤ民話「花嫁と死の天使」

上記書pp.32‐35 より要約

導入:あるところに「初夜で夫が死ぬ×3回」の花嫁がいた

あるところの学識ある大金持ちに、自慢の娘がいた。 しかし、その娘は嫁ぐ度に花婿が初夜の床で死ぬ、という奇怪な事態に3度見舞われており、非常に気に病んでいた。

貧しい若者が、呪われた花嫁と結婚する。

ある日、非常に貧しい甥っ子が金持ちの家に訪ねてきて7日滞在後、金持ちの娘に結婚を申し込む。 金持ちは娘の夫となる人にいままで起きた悲劇を伝え、諦めるように言ったり、金貨銀貨が目的なら好きなだけやる、と言ったりして断る。 しかし若者の決心が揺るがないので、2人の結婚を許可する。

結婚披露宴に現われて若者に助言するエリヤ

2人の結婚披露宴の日。謎の男が現れて、 「これから現れる乞食を手厚くもてなすように伝えてくる。(語り手によればこの男は預言者エリヤである)。 謎男(エリヤ)の言う通り、乞食が宴席にやっきたので、若者は彼を手厚く歓待する。

乞食に扮した「死の天使」が花婿を迎えに来て、花婿は交渉するが聞き入れられそうにない。

宴がお開きになったとき、乞食は花婿に「わたしは主の命令でおまえさんの命をいただくためにここにきている」と言ってきた。彼は死の天使だという。 花婿は延命を懇願するが聞き入れられない。ダメ押しで「妻に暇乞いする時間だけでも」と頼むと、これは聞き入れられた。

ここで花嫁のターン!

花婿から別れを告げられた花嫁は、死の天使のところに向かい、彼に言う。

「わたしの夫は死にません。聖書に書かれているではないですか。『男が新しい妻を迎えた時、彼は戦争に行かないし、どんな仕事も課せられない。彼は一年間家で自由にし、娶った妻を喜ばせなければならない」と。聖なる一者ーほめたたえよ、御方ーは真実なる方で、その法は真実であり、もしあなたがわたしの夫の命を奪うなら、律法は嘘になります。」

死の天使はそれを聞き、 「あなたのご主人は私にとても親切にしてくれたので、わたしはあなたの願いを叶えてあげあい。わたしを諸王の王のところに行かせ、彼に尋ねさせてほしい」 天使は去り、すぐ戻ってきて、神(※)が花婿の命を許す決定を下したことを告げた。

(※)「聖なる一者ーほめたたえよ、御方はーー」と表記

終わり

その夜。花嫁の父と母は一睡も出来ず泣き、真夜中に起きて花婿用の墓を掘ろうとして出かけた。 しかし、花嫁の部屋を横切ろうとした時。花嫁と花婿が楽しそうにベッドのうえで笑い、むつみあっている声が聞こえた。

おしまい。

補足と雑語り

ユダヤ民話40選にも類話が収録されていました。

が、そちらのお話は冒頭の「花嫁が初夜の床で夫が死ぬ×n」というくだりはなく、「あるところに学識ある花嫁と花婿がいて、披露宴がもよおされていた~(要約)」からはじまるような感じでした。

「花嫁の夫となる者が次々と殺されていく」という設定は聖書ならば「トビト記」、あとは「アラビアン・ナイト」にも似た話がある設定だそうです。なので、この版はそのへんと後半のお話がくっついた伝承なのだと思います。

「ユダヤの民話 上」の補足(「出典」p.ⅱより)にはは、ピンハス・サデ―が「このバージョンは他の類話よりも芸術性の優れたものである」と紹介しており、私もそう思うので「ユダヤ民話40選」ではなくて「ユダヤ民話上」からの要約を紹介しました。

えーと、そうそう、で。この「死の天使」というのが『サマエル』だと受容されている…というのがこの「ユダヤ民話40選」のほうに補足されていました(ちょっとまた書籍確認したら補足します)

さて、一応このお話で鍵となった「申命記24章」の一節もご紹介しておきたいと思います。

5 人が新たに妻をめとった時は、戦争に出してはならない。また何の務もこれに負わせてはならない。その人は一年の間、束縛なく家にいて、そのめとった妻を慰めなければならない。

(申命記24章5章/口語訳)

新共同訳

私はプロテスタントですが雑魚なので律法部分を覚えていることはあんまりないのですが…この箇所はなぜか印象的だったので私もうっすら覚えていました。

そして逆に夫は覚えていない箇所だったので、「そーかそーか、誰でも印象に残っている箇所ではないのか~」と思ってちょっと嬉しくもなりました。

フィクション作品を鑑賞したあと(映画・小説・マンガなど媒体は問わず、ストーリー性のあるもの)、その物語に直接関係してないような生活の些細なことに対しても背筋が伸びるような感覚を覚える、という体験は人間あるあるかと思うのですが(物語の没入体験の効果、みたいなヤツ)

個人的には「ユダヤ民話40選」の中では一番それが起きた説話だったので紹介しました。

ユダヤ民族がこうやってトーラーを諳んじることと大事さみたいなのを身体化させて継承していった、その一端に触れられたのかなぁ、と思いました(雑語り)

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