兄目 葵(あにめ あおい)
主人公。学校でマンガの話しをしすぎて、孤立してしまった15歳。石本伝道師と一緒にラビーちゃんを捕まえたことがキッカケで兎有留(とある)教会に出入りするようになる。石本伝道師とマンガの話をしていくなかで、自分のやりたいことに向き合っていく。新しい予感に胸をおどらせ始めた葵はスマホを手に入れYouTube発信を始めたのだが、住所をさらされてしまう。(初登場:プロローグ)
万賀 拓海(まんが たくみ)
葵の幼なじみの高校生15歳。マンガ家を目指す少年。熱血な性格で、葵とは真逆に人目はあまり気にしない。ただ創作のことだけは世間の意見に左右されてしまうこともあるようだ。サブカルのたしなみとして聖書を知りたいと思っている。葵のYoutube発信を応援するも、交通事故に遭ってしまう。(初登場:第3話けものフレンズ)
石本 剛(いしもと つよし)

最近、兎有留教会に赴任してきた牧師見習いの青年。ウサギのラビーちゃんとミロを愛する34歳。葵と拓海からマンガの話を教わりつつ、たまに聖書の話しもする。人当たりのよい青年だが、過去の詳しい話しはあまりしないので謎に包まれていると言えなくもない。(初登場:プロローグ)
ラビーちゃん

石本の飼っているミニウサギ。ミニといってもウサギの中では最大級に大きくなる種類。実は人間の言葉がわかる(しゃべることはできない)。性別はご想像にお任せ。(初登場:プロローグ)
大泉 創(おおいずみ そう)

兎有留教会に来ているクリスチャンの少年。葵と同じ学校だが学年が違う。彼女と共にマンガ・アニメ好きらしいが、なにかワケがありそう…。(登場:第4話、第9話、第12話)
大泉 香穂子(おおいずみ かほこ)

兎有留教会に来ているクリスチャンの女性。創の母親。良くも悪くも周りが見えなくなるほど熱心な信仰を持つ。熱心ゆえに初対面の葵に聖書を買って渡し、葵を引かせてしまう。(初登場 : 第16話)
第19話 「ともし火」


「…朝…」

「動けない…こんなに晴れてるのに…」

「葵?ショックなのはわかるけど、あんたまでそんなになっても変わらないんだから。早く起きて朝ごはん食べなさい」

「…お母さん、あのね…」

「なに?」

「…(何て言えばいいの?拓海が急いで帰ってきたのは私のせいなの、って?私のワガママで拓海があんな状態になったのっ、て?)」

「ーー今日、休みたい…」

「--明日は行くのよ」
\
ぱたん
/

「(このこと、石本さんにも連絡したほうがいいのかな)」

「(でも…石本さんはネットあんなこと言われてる人なんだよ?会うの怖い…)」

「ーーー怖い。ひどい。神さまなんてウソだーー全然守ってくれない。なんでこんな最低なことするのーーそんな神さまなら、私はいらないーーー!」




「--葵!」

「拓海 !? 目が覚めたの?」

「---」

「よかった…!よかった…!!」

「あのね、拓海。言わなきゃいけないことがあって……え?拓海、どこ行くの?」
「--
-」

「やだ、行かないで、拓海…ッ!」

「--がばっ!!」


「…夢…………」

「今の夢、ただの夢だよね。まさか、まさか、拓海の身に何もないよね…」

「病院行かなきゃ…!」




「あら、あなた!」「兄目さん」

「!大泉先輩と…香穂子さん(だっけ…)」

「どうしたの、こんなところで。どこか怪我でもした?」

「大泉先輩こそ…」

「僕らはお見舞い。ほら、兄目さん覚えてるかな兎有留教会の
こんなおじさん」

「(教会…教会の人たちってそんなにお付き合いが濃いんだ…)」

「それで、あなたは怪我したの?それかどなたかのお見舞い?」

「実はーーー」
*
*
*


「ーーー万賀くん、そんなーー」

「(容体に変わりないみたい…やっぱりただの夢だったんだ)」

「ーーじゃあ、創。お祈りしましょうか。あなたはお祈りしたことはある?」

「…自分では、ないです(石本さんと小泉先輩がお祈りしてるのを見たのとか、たまに石本さんがお祈りしてくれてたりするのを聞いたくらいだもんね…)」

「じゃあ、天にいる神さまに話しかけるから、心を合わせてくれればいいわ」

「(お祈りなんて…気休めだよ…)」

「恵み深い天の父なる神ーーー御名をあがめて、感謝いたします」

「(感謝なんて、できない)」

「万賀拓海くんをどうか助けてください。体は動いているのに、意識が戻りません」

「(なんでこんなことになるの)」

「僕たち人間にはどうにもならない事も、神さま、あなたはすべてをご存知ですから。どうか神さま、全き癒しを与えて下さい」

「(全き癒し…なんなの、それ。そんなのありえない)」

「万賀拓海くんの意識がどうなっているのか僕たちにはわかりませんがーーどうか寂しい思いをしてませんように。恐怖や不安を感じていたら、そこに共にいてください」

「ーー(「共に」?)-ー」

「この祈りを、愛する主イエス・キリストのお名前によってお祈りします。アーメン」

「アーメン」

「ーーー兄目さんーー」

「あれ…?」

「(私…泣いてる…)」
*
*
*


「お祈りなんて意味ないって思ってた。でも涙が出てきた…。心に何かが触ってくる、みたいな…」

「ーー聖書、か。そう言えばちゃんと読んでなかった。創世記で止まっちゃったし」
パラ…

「…どこから読んだらいいんだろう…石本さんが言ってた気がするけど聞き流してた」

「……そうだ、ここの本棚のマンガは石本さんに貸したとき聖書の話しを聞いたやつがいっぱいあるんだ…思い出してみよう」

「そうだ、【魔法使いの嫁】から始まったんだよね、マンガと聖書の会…チセがエリアスに買い取られっるっていう設定がキリスト教の『あがない』みたいだって話しだっけ…」

「えっと…スマホで調べながら聖書を開いてみよう…コリント人への第1の手紙…」
パラ…

「それから【けものフレンズ】…サーバルちゃんのセリフ『君は〇〇なフレンズなんだね!』っていう意味のコトバは聖書にもあるって言ってたな…まさかの共通点だよね」

「…これもコリント人への第一の手紙だ、12章…」
パラ…

「あとは、【恋は雨上がりのように】。自分が挫折したときに手を伸べてくれる存在を好きになるのはあること、って話ししたっけ。それで『神サマ』は人間を無条件で愛してるって話しも…」

「創世記。…最初読んだときは読み飛ばしてたな…こんなにさらっと書かれてるんだ…」
パラ…

「【ヒカルの碁】も…神サマは、神サマのために力を使いたいって願うなら力を与えてくれる…でもそれは人間にはわからない、人間には刺繍の裏みたいにに見えるって」

「ヤコブの手紙…」
パラ…

「あとは【神風怪盗ジャンヌ】。神風怪盗ジャンヌで『神さまは世界を創ったけどあとは大きくは介入してこない』って考え方だけど、キリスト教は違うって。キリスト教は…イエスを救い主として送り込んできたってことが何より神さまの介入の証拠だって考えるって」

「ヘブル人への手紙…これか」
パラ…

「次が【フルーツバスケット】。キリスト教では、今起きてる悪い事が『自分が過去に犯した罪』とか『先祖の呪い』だとは考えないって…」

「ヨハネによる福音書、9章…」
パラ…

「【カードキャプターさくら】は…たしかさくらとクロウカードの関係が神さまと人間の関係に似てるかもって。神さまを信じる心も、神さまが与えてくれる…」

「エペソ人への手紙2章…」
パラ…

「そうだ、【るろうに剣心】。聖書には『罪の重荷を下ろして生きる方法』について話したよね」

「…ペテロの第二の手紙」
パラ…

「それから【鋼の錬金術師】。『等価交換を超える法則』が聖書には書かれてるんだって言ってた…」

「それが、イエス・キリストなんだって教えられた。信じたような気持ちになって…でもまだまだわからないことがいっぱいあって」
パラ…

「石本さんにもらった【塩狩峠】。主人公の気持ちがわからなかったんだ。キリスト教を信じたからって急にこんな気持ちになるってことはないんだって思った」

「『一粒の麦が地に落ちて死ななくては』…これもヨハネによる福音書か。12章…」
パラ…

「【ママレードボーイ】の話しをしたのは、初めて教会の礼拝に出たときだったなぁ。このあたりから楽しくなってきて」

「雅歌。あった。これはたしか教会と神さまとの関係のことを詠ってる箇所なんだっけ…」
パラ…

「【千年女優】。『だまし絵』みたいなアニメだけど、ヨハネの黙示録もそうだって言ってた」

「たくさん解釈がわかれてるって言ってたよね。この箇所は、今は読まなくていいかも…」
パラ…

「…そこから、私がYouTube投稿はじめたんだ。そっちが楽しくて、きっと自分は救われてるんだって思ってた。」

「私が石本さんと会ってない間も、拓海は石本さんに会いに行ってたって言ってたな。たしか【灰羽連盟】を貸して、あとは【夏目友人帳】の話しもしたんだって」

「【進撃の巨人】では、進撃の巨人の世界みたいに“この世も不条理だ”って石本さんが考えてるって知ったよね」

「ヨブ記ーー」
パラ…パラ…パラ…

/ぱたん\

「…大泉先輩のお母さんが渡してきたこの聖書…すごく強引な渡され方で嫌だったけど…」

「(まさかこんなカタチで読みたくなるとは思わなかった)」
はらっ


「?なにこれ ? 誰かのメモ帳みたいな…ヨハネによる福音書3章ーー」

「ここだ…」

「……!」

「ーーー私ーーー行かないと…!」
がばっ だだだだだだっ

「葵?どこ行くの葵 ! ?」
\
ばたんっ
/


「ちょっと、葵!?」
