兄目 葵(あにめ あおい)
マンガやアニメが好きな高校生。石本伝道師と一緒にウサギを捕まえたことがキッカケで、兎有留(とある)教会に出入りするようになる。石本伝道師にマンガの話をしていくなかで、自分のやりたいことに向き合っていくのだが……
万賀 拓海(まんが たくみ)
葵の幼なじみの高校生15歳。
マンガ家を目指す少年。熱血な性格。
石本 剛(いしもと つよし)
葵と拓海からマンガの話を教わりつつ、たまに聖書の話しもする。過去には新興宗教の幹部候補生だったらしく……
大泉 創(おおいずみ そう)
兎有留教会に来ているクリスチャンの少年。葵と同じ学校だが学年が違う。マンガやアニメ好きらしいが、なにかワケがありそう…。
ラビーちゃん
石本の飼っているミニウサギ。ミニといってもウサギの中では最大級に大きくなる種類。実は人間の言葉がわかる(しゃべることはできない)。性別はご想像にお任せ。今回は本編中に出てこない。
春。話すことが苦手な葵は、友だちができないまま高校生活のスタートを切ってしまった。落ち込んでいたところ、〈とある教会〉の牧師見習いの石本と出会う。大好きなマンガやアニメの話しならたくさん話せる葵は、石本にマンガを貸す約束をする。石本にマンガの話をするうちに、聖書との共通点を知るようになる葵。興味を持ち、石本からキリスト教の基本的な話を聞く。信じてみたいけど受け入れられないことに戸惑いながらも、礼拝に参加してみることにするのだった。
目次
第12話 ママレード・ボーイ
「ーーこの祈りを、尊き主、イエス・キリストの御名によってお祈りいたします」
「ーーアーメン」
「…これがキリスト教の礼拝かぁ」
「思ってたよりフランクだったな」
「そう?わ、私は固く感じたけど…」
「(パタパタ)葵さん拓海くん、今日は礼拝に来てくださってありがとうございます」
「いえいえ、…石本さんがお話ししてないのはちょっと残念でしたけど」
「え?ああ、そうなんです。伝道師の僕一人では聖餐式ができないことになってまして。ですから洗礼式や聖餐式といった儀式のときは、ふだん隣町にいる牧師先生がくることになってるんです」
「けっこう厳しいんだな」
「(ちゃんとしてるって見方もできるけど…。でもたしかに『信じるだけでいい』っていう割には厳しいのかも)」
「そう言われるとミもフタもないかもしれませんね〜。あ、おうどん食べていかれます?みなさんが用意してくださみたいですよ」
「あ、はい…」
「おーい、創くーん」
「あ、こんにちは。礼拝に来てくれたんだね」
「(来てくれた?私たちが礼拝に来ることが嬉しいの?やっぱりこの人って教会サイドの人なんだなぁ)」
「おおーい、石本センセぇ〜」
「あ、はいはい今行きます〜」
「はじめての礼拝はどうだった?」
「ご近所の集会所的な雰囲気だよね」
「た、拓海ってば!シツレイな…!あいや、その、日常系マンガのワンシーンになりそうな、ほのぼのした風景だと思いました!」
「日常系…」
「ぶっ、面白いこと言うね。ぼくは小さい頃から通ってるから考えたことなかった」
「(笑うんだ…前に見たときより明るい気がする)」
「大泉さんは、一人で通ってるんですか?」
「母さんと一緒のことが多いんだけど、母さん今日は用事があって。俺は生まれる前から通ってるらしいよ、覚えてないけど」
「(だから馴染んでるのか…)」
「石本さんにマンガ持ってきたんだけど、今いそがしそうですよね」
「そうだね、もうちょっとしたら落ち着くと思うよ。何のマンガを持ってきたの?」
「ま、【ママレード・ボーイ】って知ってます?」
「タイトルは知ってる。けっこう古い少女マンガだよね」
「2018年には実写映画も出たよな。続編もやってるし」
この記事はネタバレを含んでいます。ネタバレが嫌な方は、原作を読んでからまた遊びに来て下さい!更新のお知らせを受け取りたい方は、
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ママレードボーイはどんなマンガ?
◆ストーリー◆
小石川 光希(みき)は、ある日いきなり両親から「離婚する」ことを告げられる。ハワイ旅行で出会った松浦夫婦と気が合い、母親がその夫と、父親がその妻と恋に落ちたため、お互いパートナーを交換して再婚するのだと言う。しかも、松浦夫妻の息子の松浦 遊(ゆう)も含めて、みんなで一緒に暮らそうとまで言い出す始末。そんな非常識な生活の中、一緒に暮らす遊に惹かれ始めていく。
やがて、二人は付き合うようになるが、遊は『自分の本当の父親』を探していた。そして両親たち4人が、ハワイ旅行で出会ったのではなく、学生時代からの友人であったことを知り、自分と光希が『血のつながった兄妹』である可能性を疑うようになる。遊は光希に別れを告げて、進学先を『京都工業大学』に決める。
大学に進学しても、遊を忘れられない光希は、遊に会うために京都に行くが、遊は「彼女がいる」と嘘をつく。しかし、夏季休みで帰省した際、気持ち抑えきれなくなった遊は、自分達が『兄妹』であることを光希に打ち明ける。最後の思い出として、北九州への旅行をした二人は、たとえ禁断の関係であっても結婚することを誓い合う。
帰宅した二人は、両親たちから『過去についての真実』を聞かされる……
(引用:【ママレード・ボーイ】wikipediaより)
甘くて苦いママレード。熱いか冷たいかにしてほしい神。
「タイトルの【ママレード・ボーイ】っていうのはどういう意味なの?」
「これは、遊の性格のことを表現してるんですよ」

(画像:吉住渉「ママレード・ボーイ」より。タイトルの由来)
「遊ってママレードに似てる。ほんとはすっごく苦いとこあるのにみんなうわべの甘さにだまされて気づいてないの。ママレード・ボーイ! ねピッタリでしょ!? 」
「でも作者の吉住先生は、あとがきで”実際はこじつけ”って言ってるよな。いいタイトルとは思うけど。タイトルって地味に大事だからすげえって思う」
「ママレードジャム、光希は苦手だって言ってますけど、私はハチミツよりもママレードが好き。今日礼拝の途中で配られてたパン、なにもつけなくて大丈夫でした?」
聖餐(せいさん)とはイエス・キリストの最後の晩餐に由来するキリスト教の儀式。礼拝中に配られるぶどう酒(ところによってはぶどうジュース)とパンを食べる。(ここをクリックすると石本と葵の会話に戻ります)
もっと知りたい方はこちらへ→歪みの国のアリスー愛する存在の血と肉を食べる日本人は100万人 !? 歪みに敏感な人ほどキリスト教のアレがオススメ
「そんなものだと思ってたから考えたことなかったな」
「おれは甘じょっぱいのとかどっちつかずは苦手なんだよなー。おれがクリスチャンになったらチョコソース持ってくる」
「ーー」
「?どうしました?」
「いや、俺にはない考え方だなって。俺がそんなこと言ったら母さんになんて言われるか、とか考えてた」
「お母さんに?」
「気にしないで。聖書では白黒はっきりしてないと神さまに叱られちゃう描写があるけど、食べ物は真逆の組み合わせも美味しくていよね」
「え?白黒はっきり、ですか?」
「っとね『ヨハネの黙示録』って聞いたことある?聖書の一番最後にあるんだけど…(パラパラ)」
『わたしはあなたのわざを知っている。あなたは冷たくもなく、熱くもない。むしろ、冷たいか熱いかであってほしい。このように、熱くもなく、冷たくもなく、なまぬるいので、あなたを口から吐き出そう。』
(ヨハネの黙示録3章15節~16節)
「熱いか冷たいか、って言うのは『情熱的か、むしろ無関心』ってことですか?それだとヘンな気もしますけど……」
「うーん、俺も最初はよく分からなかったんだけど、これは『ラオデキヤの教会』に向けてのお叱りなんだって。熱いか冷たいかっていうのは、『熱ければ冬の寒さをしのぐこともできるし、冷たければ夏に喉を潤すこともできる』ということらしいよ。神さまは『中途半端なのがよくない』って伝えてるんだって」
「(聖書のこと詳しいんだ…。やっぱり親がクリスチャンだと違うなぁ。私が聖書のこと話したら笑われそう)」
「じゃあママレードジャムはお叱り受けますかね……」
「はは、『甘いか苦いかどっちかであってほしい』とは聖書に書いてないし、ママレードジャムは大丈夫だと思うよ」
聖書のラブ要素といえば【雅歌】
「要するに光希と遊の恋模様を描いた恋愛マンガなんですけど、両親の入れ替え婚っていうちょっとアレな設定もあるんです」
「入れ替え婚!?」
「それは…やばくない?ドロドロ系だとは思わなかった」
「あいや、そこは重く描かれないんです。それだとフルバのほうがよっぽど重いかな…。ママレはテンポよくまとまっててすごくデキの良いマンガです!」
「展開が過不足なくてちょうどよくって。少女漫画の金字塔の一つと言われるだけあるよな!」
「あー、私も美少年と一緒に暮らしたいなー。でも一緒に暮らしたからって両想いになるとは限らないし、難しいところ……!!」
「(はっ!)」
「「?」」
「(いま私は拓海と大泉さん2人に囲まれてて、ハタから見たら両手に男子な少女マンガ的絵づらなのでは!?)」
「(教会ライフは日常系じゃなくって三角関係の少女マンガ系だったの!?いやいやいや、いきなりそんな、妄想しすぎだからおさえないと…)」
「あ、石本先生」
「いやー、役員さんとの話が長引いちゃって。でも3人とも楽しそうで何よりです。なんの話をしていたんですか?」
「少女マンガの話し」
「少女マンガですかー。いいですねぇ」
「そういえば創くんは、彼女さんと知り合ったのは少女マンガがきっかけでしたっけ」
「!!(か、かのじょいたのか…。いや、別にいいんだけど…はああ、なんかちょっとショック…)」
「ああー、まどマギね。魔法少女モノのアニメだから少女マンガじゃないかな。どっちにしろ、そのせいでちょっとモメてるんだけどね…」
「え?」
「いや、何でもないから気にしないで」
「少女マンガといえばやはり恋愛ですが、聖書にも恋愛要素の強い箇所があるのをご存知ですか?」
「えっ!?どこに」
「もしかして…【雅歌】のこと言ってる?先生」
「おお、あたりです。旧約聖書ですね」
男女の恋の歌であり、ユダヤ教では「諸書」のうちに入る。キリスト教では伝統的に預言書の前に置かれる。恋愛と男女の賛美を歌い上げる詩であるため、扱いをめぐって古くから議論が絶えなかったが、さまざまな経緯を経て正典におさめられた。キリスト教の置換神学においては比喩的に解釈して「キリストと教会の関係」を歌う歌であるという解釈がされてきた。ある意味、異色の作品である。(引用:【雅歌】wikipediaより)
「というように、『こんなノロケが延々と続く箇所聖書に入れていいの?』という議論がされ来て、ちょっと恥ずかしい恋愛ポエムですね」
「へー(ぱらぱら)」
『どうか、あなたの口の口づけをもって、わたしに口づけしてください。あなたの愛はぶどう酒にまさり、あなたのにおい油はかんばしく、あなたの名は注がれたにおい油のようです。それゆえ、おとめたちはあなたを愛するのです。』
(雅歌1章2節~3節)
「へぇぇぇ、なんだかロマンチック」
「ですよね。読んでるこっちが恥ずかしくなりますよね」
「ママレードボーイもときめく要素がいっぱいあるけど、これはこれで妄想に使えそう…あのキャラとこのキャラのカップリングのときにこれをこうしてああして…」
「葵さん?」
「は!!いや、なんでもないです!」
「ぼくは雅歌ほとんど読んだことないんだよね」
「え、そうなんですか?聖書のこと詳しそうだったからてっきり全部読んでるのかと…」
「いやいや。新約は通読したけど、旧約はCSで習うところくらいかな」
「通読…?シーエス…?」
「あ、通読というのは聖書を通して読むことで、シーエスはチャーチスクール…教会学校の略です」
「教会学校…ってナニ?教会でやる塾みたいなもの?」
「そんな感じ。あそこで走りまわってる小さい子たちがメイン参加者で、子ども向けの分かりやすい聖書の内容だよ。日曜の朝にやってることが多いのかな」
「(日曜の朝?じゃあクリスチャンになったら朝アニメが見れなくなる…今日は録画してきたからいいけど。せっかくの日曜なのに勉強してお昼まで礼拝に参加して…なんだか別世界の人って感じ…)」
「今月は雅歌読んでみようかな」
「お、いいですね。何かいい解説書はなかったかな~」
「(いろいろカルチャーショックみたいなのはあるけど、なにげに楽しいかも。石本さんと話してるときとはまた違った感じ)」
「ーーねえ、兄目さん!」
「え?」
「もしよかったら、なんだけど、来週の礼拝も来てくれないかな。……彼女を教会に呼びたいんだけど…マンガ好きで年が近い子が来てくれるって言ったら、来やすいと思うから」
「え」
「だってさ、葵。どうすんの?」
「あ、はい、そこまで言うなら…(しばらくは来てみるつもりだったし)」
「今まで人に頼りにされたりなんて無かったけど、私もしかして必要とされてる…?」
「こういうのきっかけに友だち出来るかも」
「なんだか、すごいかも。神さまを信じるとこういうイイことが起きるってことなのかなぁーー」
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【ママレード・ボーイ】を読んでみたい方は
【ママレード・ボーイ】は、全8巻、文庫本版だと全5巻。まとまりのよいすばらしい少女マンガです。管理人はコミックを読んでいました。
▼紙の本 ママレード・ボーイ全5巻セット (集英社文庫―コミック版)
そして、続編のママレード・ボーイリトルも連載中!主人公は「両親`s」の子どもたち!光希や遊の様子もバッチリ描かれたマンガです。
▼電子書籍【全1-5セット】ママレード・ボーイ little
桐稜大学付属中学に通う松浦立夏。姉・光希と兄・遊はひとり立ちし、同い年の朔と父二人、母二人の6人暮らし。ふつうの家族だと思っていたけど実は結構、複雑みたいで…?
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