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【トルドート・イェシュあらすじ】中世ユダヤ人が描いたイエスは、神名を巧みに操る不遜でダーティな魔術師だった…

概説

とりあえず参考資料の引用

このキリスト教側からのユダヤ人理解に対して,ユダヤ人たちはしばしば対抗的な姿勢を示した。その表現手段は,宗教論争の文学や聖書の註解,祈祷書や説教,極端な場合には自死としての殉教にも及んだ。これらの対抗的表現には,彼らがキリスト教文化から影響を受けて形成したものも少なくない。ユダヤ人はキリスト教世界の住人および言説の一部として,キリスト教に対峙する自分たちのアイデンティティを構築していったのである(4)。そして,この対抗的な表現として近年注目されているのが民間伝承である。ユダヤ教世界には,福音書や聖人伝などのキリスト教文学のイエス物語とはまったく異なる,ユダヤ人たちの語るイエス伝が存在した。それが『トルドート・イェシュ』(Toledot Yeshu)である(5)。『トルドート・イェシュ』はそれ自体が多様な伝承であるが,本稿では中世西欧で流布したストラスブール写本版を紹介し,考察する。

ユダヤ教世界のイエス伝
―ストラスブール写本版『トルドート・イェシュ』と
その文脈についての研究―
志田 雅宏

▽私の理解をざっくり

・基本、ユダヤ教徒たちはイエスに興味なし。タルムードとかにもあんまり言及されない
・ただ、「トルドート・イェシュ」のように、福音書の対抗物語として描かれた物語もあるにはあった
・このコラムでは、いくつかある「トルドート・イェシュ」のバージョンなかの、かなり流行した版の日本語訳…(をこのコラムではさらに要約してみる)

「トルドート・イェシュ」あらすじ

▽筆者の興味を中心に超ざっくり紹介した動画

▽ストラスブール版& ▽ライムンドゥス版

婚約者のいたマリア(ミルヤム/ミリヤム)、ヨセフの夜這いによって身ごもる

マリアにはダビデ家出身の婚約者・ヨハナンがいた。ある安息日明けの夜、ミリアムに想いを寄せていたヨセフは酔ってマリアの寝所に忍びこんだ。

マリアはそれを自分の婚約者ヨハナンだと思い込んだ。またマリアは月経中であり「私は月経の穢れ(ニダ―)によってけがれているのですから」と言って断ろうとしたが、ヨセフはそのま押し切って彼女と寝た。

夜更けに本物のヨハナンがマリアのもとにやってきて、ことが判明。ヨハナンは、パンデラの子ヨセフがマリアに想いを寄せていたことを思い出し、彼が忍んできたことに勘付く。

ヨハナンはマリアを負いてラバン・シムオン・ベン・シェタハのもとへ行って、ことの成り行きを相談した。

日が満ちて、マリアはは男児を産んだ。彼の母の兄弟にちなんで、彼の名はイェホシュアと名付けられた——彼の堕落が露呈した後、人々は彼をイェシュと呼ぶようになった

利発だが、師を顧みない「イェシュ」

イェシュは利発であり、律法とタルムードを学んだ。

しかしイェシュは尊大でもあり、弟子たちが師に対して行うような態度をみせない厚かましい態度を見せることがあった。そんななかで「奴は私生児(マムゼル)だ」であるとか「奴は私生児、月経の女の息子(ベン・ハ‐ニダー)だ」といった陰口をたたかれていた。

ある日、ラビたちがミシュナ・タルムードの一篇について議論しているとき。イェシュが「師弟において、師(エトロ/ラビたち)の方が知恵で優れているとはかぎらないことを示唆し、ラビたちに痛烈な皮肉を投げつけた。その傲慢さに驚いた賢者たちは、イェシュの出生を確かめるべく、マリアのもとに使いを送る。
そこで

R・シムオンが R・ヨハナンに何と返答したのかも、彼女が身ごもったときヨハナンは大いなる恥のゆえにバビロニアへ行き、戻ってきていないことも、このミルヤムがこのイェシュを産んだことも。
マリアは死罪とはならなかった。彼女は自分の考えでおこなったのではなかったからである。パンデラの子ヨセフは、一日中売春婦たちを牧していたからである。R・シムオンから自分が死罪にならないと聞くと、彼女も「事はそのとおりです」と答えて言い、それを認めた22。イェシュについての話が広まり、人々は彼に対して「私生児」「月経の女の息子」と言 った。そして、彼ら(ラビたち)は彼を死罪とした23。その後、彼はエルサレムへ逃げ去った。

イェシュ、神聖四文字の神名の力を入手する

そのころ、全イスラエルの統治はヘレニ(ヘレネ/ヘレナ)に任されていた。

「シェム・ハ ‐メフォラシュ(神聖四文字の神名)」の文字29を学んだ者は誰でも、自分の望むことをすべておこなうことができるとされていた。しかし賢者たちはその力の強大さゆえに、それを滅多に学べないようにしてあった。

中央の門の二本の鉄柱の上に、銅製の犬が吊るしてあり、なかに入ってその文字を学ぶ者はみな、出るときに犬に吠えられる。それらを見ると、文字がその者の心から出て行ってしまう。

イェシュは羊皮紙に神聖四文字の神名を書き写すと、みずからの腿を裂きそこに羊皮紙を入れた。(この時は、その文字のおかげ痛みを感じない)そして、彼は皮膚を元に戻した。彼が出るとき、銅の犬が彼に吠え、イェシュはそれを忘れてしまったが、彼は帰宅するとみずからの肉をナイフで裂き、書き留めたものを取り出した。そして、その文字を学び、力を手に入れた。

イェシュは自らを救世主と名乗り、大勢の前で奇跡をおこなって見せ、大勢の者を信じさせた。

イェシュはイスラエルの若者たち310人で集めて、「そして、私こそがそのメシアなのだ。私についてイザヤは預言した。曰く、『見よ、おとめが身ごもり、男の子を産む。彼の名をインマヌエルと呼べ』(イザ 7:14)30。さらに、わが父祖ダビデも私について預言した。…」と演説する。
すると、若者たちは「もしあなたがメシアならば、私たちにしるし(オート)を見せてください」といった。そしてイェシュは、あの神名の力により、自分の足で立ったことのない足の不由な者が自身の足で立てるようにしたり、皮膚病の患者を癒してみせたりした。彼のもとに連れてきた。彼が彼の上であの文字を唱えると、彼は自分の足で立ち上がった。そこで若者たちは「このお方こそメシアです」と認めるようになる。こうして、彼の民となる悪党たちが彼のもとに集ったのである。

賢者たちは見かねてイェシュを女王ヘレニの前に連れていって「この者は魔術(メハシェフヨート)を手にしています。彼は世界を迷わせます」と訴えた。イェシュは救世主の予言の箇所を述べてみせ、たが、賢者たちと議論で攻防する。イェシュはヘレネに「私が死者たちを復活させてみせましょう」と言い、イェシュは神名の力により死者を復活させ、恐れおののいた恐れおののいた女王は賢者たちを非難したので、彼らは大いに悲しんだ。イエスに従うものは増えていった。

賢者たちはふたたび女王ヘレネに「彼には魔術があるのです。彼はそれによって人々を惑わせています」と訴え、ヘレネはガリラヤを偵察する。(イェシュがガリラヤににて人々を惑わせている)

イェシュは彼らに言った。「戦 ってはならない。あなた方のもとに戻りなさい。天にましますわが父の力によって40」。ガリラヤの人々が作った粘土の鳥を飛び立たせたり、石臼に乗って湖の上を漂いながら進んだりした。
イェシュは騎兵たちに言った。「あなた方のあるじのもとへ行き、あなた方が見たことを彼女に告げよ」そして騎兵たちは女王のもとへ行き、これらのことをすべて告げ、女王は恐れおののいた。

イェシュ、イスカリオテのユダと空中戦する。ユダの放尿によって地に落ちる。

イスラエルの長老たちは、イェフダ・イスカリオタ(イスカリオテのユダ)。彼らは彼を至聖所に入らせ、イェシュがおこなったのと同じ方法で神名を学ばせていた。そして、女王がふたたびイェシュの一団を呼び出し、いくつか議論を交わした。

そして、イエスは女王の前で高く飛び上がった。

すると、イスラエルの長老たちはイェフダ・イスカリオタにも神名を唱えて、追って天空を飛ぶよう言った。イスカリオタとイェシュは「シェム・ハ‐メフォラシュ」の力をもって空中で戦うような状況になったが、どちらも互いを打ち負かすことはできなかった。イェフダは彼はイェシュの上で放尿したので。イェフダは穢れ、地に落ちた。

そして賢者たちはイェシュを柘榴の枝で叩き「シェム・ハ‐メフォラシュ」はイェシュから出ていってしまった(ようだった)。
彼ら(賢者たち)は女王の前から出ていき、彼をティベリアのシナゴーグに連れてきて、聖櫃の柱に縛りつけた。イェシュの仲間たちが集まってイェシュ奪還しようとして争いがおこった。イェシュは逃げる力が自分にないとわかり水を要求するするので、兵士たちが銅の器に酢を入れてイェシュに与え、そして彼の頭に茨の冠をかぶせた。イェシュの仲間たちのあいだで、兄弟同士の、父と子の争いが起こった。

…ここからは、福音書にも描かれているような出来事が描写されている。詳細は省略します。

ギサ」という男が賢者たちにイェシュをとらえる手引きをすると申し出てくる。

ギサの合図でイェシュを認識した賢者たちは、イェシュといくつか問答して、イェシュを捕らえた。

イェシュの弟子たち三百十人は、イェシュが己の死を預言されていることとして扱う(聖句の引用)ってみせたのを見て、泣きだした。そして、イェシュはは第六の日、過ぎ越しの祭りの晩、安息日の晩に殺された。
賢者たちはイェシュを運び、木に吊るそうとしたが折れてしまった。(『彼とともに「シェム・ハーメフォラシュ」があったからである』)

イエスの弟子たちは木々が彼の下で折れるのを見て、それは彼の大いなる義しさによるものだと思ったが、それはイェシュがあらかじめ用意しておいたことだった。

自分が死刑となり木に吊るされることを知っていたので、あらかじめ「シェム・ハ‐メフォラシュ」によって、木が折れるようにしていたのであった。


しかし、そのあと賢者たちがキャベツの茎※にイェシュを吊るしなおすと折れなかった(キャベツの茎に対しては、彼は「シェム・ハ‐メフォラシュ」を唱えていなかった。キャベツは木ではなく草なので「シェム・ハ‐メフォラシュ」が効力を発揮しなかった)
(※エルサレムのキャベツは四十リトラ 55以上で、とてつもなく巨大だった)

参考:志田雅宏「『トルドート・イェシュ』におけるイエス物語の論争性(2017年)

▽ここからはストラスブール版(のみ?)にあるくだり

(うまく削れてません…。まあ元の日本語訳はインターネットで読めるのでそちらをどうぞ)

賢者たちはイェシュを午後の祈りの時間まで吊るし、木から彼を降ろし、第一の日(日曜日)に彼を埋めた。イェシュとともにいた悪党たちは彼の埋葬に泣いた。



それからイェシュの弟子たちは悪党たちは女王ヘレニのところへ行き「彼らが殺したあのお方はメシアでした。」と言い、「彼は生前、いくつかの不思議な業をお示しになりました。そしていま、死んだ後、彼らは彼を埋めましたが、なんと彼は墓のなかにいないのです。彼はすでに天へと昇られたのです。『かのお方が私を連れていってくださるであろう、セラ』(詩 49 16 )と書かれています。彼は自分自身についてそう預言さ れていたのです」。と主張した。


ヘレネはそこでイェシュの死を知り、賢者たちに使いを送り、ことの次第を細かく聞き出そうとした。その際、埋葬したはずのイェシュの遺体が消えたことが判明し、賢者たちは恐れおののいた。

しかし、それは「あるひとりの者が彼を墓から運び出し、自分の庭に持ち去っていたから」であった。

女王は賢者たちに「もしおまえたちがイェシュを私に見せることができなければ、私はおまえたちのなかに生き残りや避難者を残すことはないだろう」と言った。彼女がその一定の時間を与えた後、全イスラエルが断食をし、祈りを唱えて泣いた。

イェシュの残党たちは機会を見出すと「おまえたちは主のメシアを殺したのだ」と言っていた。全イスラエルが大いなる悲しみのうちにあり、賢者たちとイスラエルの地のすべての者は大きな恐怖のゆえに場所から場所へと逃げ回った。

そんな中で、 R ・タンフーマというひとりの長老が現れ出た。彼は野に行き、泣いていると「私こそがイェシュ(の遺体を)盗み出したのだ」と言う人物と会う。曰く「あの悪党たちが彼を連れれ出さないようにするため」イエスの遺体を盗み出したのだと述べた。
彼らはすぐにエルサレムへやってきて、イェシュの遺体の足に縄を結び、エルサレムの通りで彼を引きずり、女王のもとへ持ってきた。彼らは「こちらが天に昇ったという彼です」と言った。女王ヘレネはイェシュの残党たちを蔑み、賢者たちを称えた。


そして彼の弟子たちは逃亡し、さまざまな王国に散らばり、さまざまな民を迷わせた。だが、彼らが逃げたすべての場所で、ほむべき主は彼らをその裁きにかけた。そして、彼らはみな殺された。

しかし、ユダヤの民のなかの悪党たちの多くはイェシュの後を追ってさまよい、彼ら(キリスト教徒)とイスラエルとのあいだには争いが続き、イスラエルに休息は訪れなかった。


イスラエルの賢者たちは「あの悪人が殺されたときから三十年がたつ。だが、いまだにわれわれには休息は訪れず、さまよえる者たちとともにいる。」と言って、それは自分たちの罪の多さによると述べ、『イシュマエルの人々』(イシュマエリーム、ムスリム)にも言及する。賢者たちはキリスト教徒たちを「悪党」と呼び、「彼らが滅びへ向かい、われわれに休息が訪れんことを」と祈っていた。


賢者たちの見解はエリヤフというひとりの偉大な賢者の見解と一致した。

エリヤフはイスラエルの各地で「イェシュを信じるすべての者は私のもとへ集え」と命令を発した。そして、「私はイェシュの使者である。…イェシュがおこなったように、私もおまえた ちにしるしをおこなってみせよう」 と言い、皮膚病人を癒したり、足の萎えた人を立てるようにしたりした。(「シェム・ハ‐メフォラシュ」を唱えた)

エリヤフは、イエスに追随する者たちに演説をした。「(長い演説)…イェシュが苦しみを背負われたように。イェシュが慎み深さによってみずからを示されたのは、おまえたちにも同様の慎み深さを教え示すためだ。」「…おまえたちに対して起こるすべてのことに、おまえたちは耐えなければならないということだ。そして、審判の日にイェシュから返済を受けるだろう。…『主を求めよ。地において苦しめられてきたすべての者よ、云々』(ゼファ 2 3 )と」


そしてついにエリヤフはキリスト教徒をイスラエルから切り離した。キリスト教徒たちは彼をパウルス(パウロ)と呼ぶ。パウルスはキリスト教徒の残党に掟と命令を定めた後、さまよえる者たちはイスラエルから分かれた 。そして、対立は止んだ。

以下、ちょっとうまく読めなかったので略します。

ネストリウス派が言及されたり、シムオン(ペテロ)が登場したりしますが、ちょっとよくわからなかったので略します。気になる方はPDFを読んでください。






参考:志田雅宏「『トルドート・イェシュ』におけるイエス物語の論争性(2017年)


「むしろこっちの方がよくね?」と思えてくるダークヒーローやんけ…

生い立ちによって共同体になじめず、不遜で大胆な魔術師…

現代日本においては「むしろこっちのイエス像のほうが一般ウケしそう」と感じるくらいのイエス像だと思いました。

この文書では基本的にイエスに従った人たちやキリスト教徒になった人たちのことが「悪党たち」と表現されていて、苛烈なユダヤ人っぽさが出てるなぁと思いました。

ただ、日本人は判官びいき(だと私は認識している)なので、激しくネガティブな物言いにはかえって悪印象を抱いてしまう気がしたので、このコラムにおけるあらすじでは変えてみました。

(私自身はキリスト教徒ですので、「キリスト教徒が悪党呼ばわりされているのが気に入らなかったから変えた」と考える方もいるかもしれませんが、個人的はどっちかというとユダヤ側に対する配慮として行ったような心持ちでおります。まぁ私の心持ちがどうであろうと、ユダヤ・イスラエルに対して知識のない身であることは変わらないので、これをどう解釈してくださってもかまわないです。)

▽そのほかユダヤ民話あらすじ紹介動画