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第20話「約束の丘」(石本伝道師編:完結)

→前回のお話はコチラ

第20話「約束の丘」

 


「ーーー石本さん!」

 


「葵さん!あれ、なんだかお久しぶりですね?」

 


(お散歩中に会うなんて珍しいね。なんだかすごく焦った顔してるのは…)

 


「そういえば拓海くんと連絡がとれないのですが、なにかご存知ではありませ…」

 


「ごめんなさい!」

 


「??」

 


「ごめんなさい、石本さん。私、石本さんの悪口をTwitterで見ちゃって」

 


「!」

 


「それで、私わからなくなって。石本さん悪い人だったんじゃないかって思って…それで石本さんのこと怖くなって」


「そうでしたか…」

 


「拓海が、意識不明なんです」

 


「!」

 


「私のせいで事故に巻き込まれちゃったんです」

 


「私、Youtubeの投稿はじめたんです。楽しくて夢中になってたけど、住所さらされちゃって」

 


「せめてお母さんには話さないとって言われたんですけど話せなくて。そしたら拓海が一緒に話してくれるって言うからお願いしたら…その帰り道、トラックとぶつかって…」


「私がYouTubeなんてやらなきゃ、拓海があんな目に遭うことなかったのに。拓海のおばさんとおじさんにも謝らないとって思たのに。でも怖くて言えなくて…」


「私 どうしていいかわからなくなって、でも大泉先輩とお母さんと一緒に病院でお祈りしたんです。そしたら涙が出てきてーーちゃんと聖書読んでみたいって思ったんです」


「そしたら、今まで石本さんが話してくれたこと、色々思い出したんです」

 


「今までは、自分のことだって思ってなかった。自分に罪があることもよくわからなかった。キリスト教の神さまをーーイエス・キリストを信じるってことがどういうことなのかわからないままなんとなく信じた気になってーーー」


「もっと知らなきゃいけないことはいっぱいあるけど…でも、信じたいんです」

 


「ーーー葵さん。ちょっとだけ、僕の昔話に付き合ってもらってもいいですか」

 


「え、あ…はい…」

 




 


「ーー僕を幹部候補生に?でも僕は信者一世ですし…」

 


「そうだ。基本は肉親の推薦が必要だ、それが我々の聖典ーー聖書やその他諸宗教の教え教祖様が正しく理解して編纂しなおした聖典ーーによる規則だからな。しかし、どんな集まりにも多様性が必要だ。その証拠に僕も一世だ。君の『救済活動』に対する情熱を聞いて僕も刺激を受けたよ。僕と一緒に、一世信者たちに希望を与えようじゃないか」


「…はいっ!ありがとうございます!七星さんにそう言っていただけるなんて嬉しいです」

 

***


「…じゃあ、教祖様の力が込められたこのお塩を毎日飲めば、私の息子の病気は治るんですね?」

 


「ええ。しかし、この塩に込められた教祖様の力を無効化する使い方もあります。それは、あなた自身の信仰心が足りないときです。教祖様を完全に信頼できるようになるまで、お布施に励んでください。生活がつらいときも、教祖様が私たちのために祈ってくださっていることを思い出しましょう」

***


「……あの、七星さん。素晴らしい信仰を持っているように見える人もたくさんいますが、彼らにも塩が効いていないような気がするのはなぜなのでしょうか」

 


「人の心はそれほど弱いということだよ。強い信仰はほんの一握りの人間に与えられる特権なんだ」

 


「では、彼らの信仰がもっと強くなり、救われるためにはどうすれば…」

 


「それは君の努力にもかかっていることなんだよ、石本幹部候補生。君の仕事は教祖様の祈りと思い遣りを信者に一人ひとりに届けることだと自覚しているか?もっと励みなさい、必ず道が開けるはずだ」


「……はい……」

 

***


「……七星さん…七星さんが多額の献金を着服していると噂している信者がいますーーー」

 


「デマです、よね?」

 


「信仰が強い人間も悪魔に誘惑されやすいが、弱い人間もまたつけ入られやすい。彼らは弱さゆえにつけ入られているのだろう。君も憐れんでやりなさい」


「……はい……」

 

***



「石本幹部候補生、ちょっといいかね?」

 


「…ですから、私は嫌だって言ったのに、石本さんが触ってきたんです」

 


「?いえ、それは言いがかりです。たしかに筒瀬さんの腕をつかみましたが、それは筒瀬さんが僕に…その、告白をしてきて。ですが僕はお断りしようと思い、腕をつかんで離れていただいたんです……」


「ーー筒瀬くん、石本幹部候補生はこう言っているが」

 


「石本さんは嘘をついてます。あんなに怖い思いをさせたのにひょうひょうとウソをついてーーやっぱりこの人は悪魔がついていますっ!」


「--石本幹部候補生、実は他にも確認したいことがあってだね」

 


「先月、経理で問題になった使途不明金の領収書が君のモノだという証拠が出てきた」

 


「!?」

 


「!そんなことありえない、僕は今までちゃんと報告しているーー」

 


「残念だよ、石本くん。一緒に強い信仰を育んでいけていると思っていたのに…」

 


「七星さん!何を言ってーー」

 


「悪魔は強い者ほど誘惑するというが、まさか信じていた君がこんなことをするとは思わなかった。これほど罪を重ねてしまったら、私でも庇えない。君は償わなくてはならないーー残念だ……」


「かわいそうに、七星くん。しかしこの苦難はきっと君を更に強くするだろう。そうだな、以前から考えていた教祖様の直属部への移動の話しをーーー」


(はめられたーー?最初から、僕を利用するために幹部候補生にーー?)

 


(自分が組織でのし上がるためにーーー?)

 




 


「…………そんな……………」

 


「……ですから、あの組織には僕のことを人も悪くウワサしている人もいると思っていました」

 


「僕はあの宗教組織を去りました。負債も負わされ後ろ指を指されーー絶望しましたし、許せなかった」

 


「なぜこんなことがまかり通るのかと。神はというものがいるならばなぜこんなことを許すのか、と歯を食いしばりました」

 


「……」

 


「そんな時、聖書をーーイエス・キリストを知ったんです」

 


「聖書を読んでみると、通常読まれている聖書が組織で使っていたものと違うことに気づきましたし、聖書の『救い』は僕のような弱い人間に手を差し伸べるものなのだと感じました。強くなることを是とする組織にいた僕には目からウロコのようでした」


「生まれによって力が決まるという思想もなく、誰でも完全に病気が癒えるとは謳わず、誰でもお布施をすればさらにお金持ちになるとも謳わない、もちろん法外な値段の塩も売らないーーただ、イエスを信じるのみでこの魂を救ってくれるというキリスト教に出会いーー僕は、信じたいと思ったんです」


「ーーー」

 


『神はそのひとり子を賜わったほどに、この世を愛して下さった。』…」

 


「--!…『それは御子を信じる者がひとりも滅びないで、永遠の命を得るためである。』

 


「!よく覚えていらっしゃいますね」

 


「ヨハネによる福音書3章16節ですよね。それが…大泉先輩のお母さんがくれた聖書にこの箇所のメモが挟まってて。それを読んだら私、石本さんに会いに来なきゃって思って…」

 


(香穂子さんがあげた聖書って新品なんでしょ?メモ書きが挟まってるなんて変だなぁ…。ま、そういうこともあるか。神サマってたまにそういうことするよね)

 


「ーーそうですか」

 


「葵さんが信じると言ってくれて、僕も嬉しいです」

 


「ーーー緒にお祈りしてもらっていいですか?拓海の意識も戻るようにーー」

 


「ええ、もちろんです」

 




 

 


「…いい天気だからついこの丘に登ってきちゃったけど、ベンチがなくなったからゆっくりはできないなぁ」

 


「ま、ちょっとだし日向ぼっこがてら昨日書いた手紙読み返そう。深夜のテンションで書いたからへんなところあるかも…」

 

ーー石本先生。お元気ですか?

 

ラビーちゃんの様子はどうでしょうか? 改めてお手紙っていうのもいいかなと思ってあえてお手紙にしてみました。 石本さんがとある町から引っ越してもう…あれ?何年?えっと…とにかくけっこうそれなりになりましたね。

 

 

私は社会人3年目を迎えました。周りの子が進学するなか高卒で働くのはお母さんにも猛反対されたし勇気がいったけど、思い切って選んで良かったです。

 

 

布団屋さんでの仕事は楽しいですよ!私は寝ることも好きだから、商品のことも覚えやすいです。営業で他の県に行ったりもしてます。 それに、周りは高齢の人が多いからネット通販まわりのことなんかも任されちゃってけっこうやりがいがあります。

 

 

マンガ読む時間はへっちゃったけど、今年は断固有給を取ってゆっくりマンガとかアニメを楽しむ時間を作ろうと思っています。

 

 

働きながらぼちぼちやってる動画投稿も登録者が増えてきて、嬉しいコメントをもらうようになりました。そうそう、この間とある教会に私の動画を見て遊びに来てくれた人がいたんです。

 

 

前よりも観やすさを考えて作ってるから投稿は遅くなっちゃうけど、こっちのほうが喜んでくれる人が多いってわかったから楽しいです。

 

 

仕事中に声をかけられることも多くなりました。住所がさらされちゃったからたまに変な荷物が届いて困りますけど…気にしないことにしました。その代わりたまに応援物資が届きます。背に腹は代えられないですよね。

 

 

あとは、教会の礼拝も行けてます。仕事で行けない時もありますけど、それでも行き続けることができてます。

 

 

創くんの大学の話を聞くのも楽しいです。礼拝が終わった後お祈りしあってまた新しい一週間を頑張る感じです。創くんの彼女さんもたまに来ます。

 

 

香穂子さんが最近とある教会に来てないのはちょっと気になりますが、それはそれで平和かも…とか言ったら怒られますかね。でも創くんが生き生きしてるのは事実なので…。

 

 

拓海とは連絡とってますか?意識不明だった時のことを漫画にしたらのがバズって勢いがついてーー 上京してマンガ制作頑張ってるみたいです。私はよくネットゲーム上で会ってます。

 

 

まだまだたくさん話したいことがありますが、手紙に書くとものすごい量になりそうなのでここまでにしますね。また書きますね。                                

 


「…どうよ?うん、悪くないんじゃない?」

 

ーさああっー


「ーーいい風」

 


「ーーー『風は南に吹き、また転じて、北に向かい、めぐりにめぐって、またそのめぐるところに帰る』ーー」


『事の帰する所は、すべて言われた。すなわち、神を恐れ、その命令を守れ。これはすべての人の本分である。神はすべてのわざ、ならびにすべての隠れた事を善悪とともにさばかれるからである』ーー」

 

ー「いつかみ 聖書解説」石本伝道師編:完ー

※この物語はフィクションです。「キリスト教」「聖書」「取り上げた漫画/アニメ」の内容については虚偽のないように努めて一次情報に基づき制作いたしましたが、登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。