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【更新】「異類婚姻譚」をめぐるアレコレ(5月更新)

ソロモンとナアマ(ネアマ―)の馴れ初め?ユダヤ民話「ソロモンとアスモダイ」

※これはいわゆる「民話」で、トーラー(律法)タナッハ(≒旧約聖書)をめぐる解釈の周辺伝承のひとつとして゜取り扱われてきたもの゜…であることを整理しつつ読んでくださるとよいのかなぁと思います。聖書と呼ばれているものがどのようにして書かれて、何が書かれていて何が書かれていないのかという点を、私たちが(この話やめるわ)

「ソロモンとアスモダイ」あらすじ

参考:ユダヤの民話 上 p.103〜より要約

▽朗読Ver作りました!

ソロモン、神名の掘られた指輪の力で悪魔アスモダイを使役していた。

ソロモンが力ある王に成長したとき。ソロモンは秘密の神名が彫られた指輪をしており、ゆえに誰もから恐れられていた。 ソロモンはその指輪で悪霊の王アスモダイを呼び出した。そして彼はアスモダイにエルサレム神殿建設を助けさせたりなど使役し、支配下に置いていた。

有頂天になりすぎたソロモンは、神の命令によってアスモダイと入れ替わられ、諸国を放浪することになる。

やがてソロモンは有頂天になり、聖書が王に禁止している警告をこごとく破ってしまった。 神はアスモダイを呼び出し、彼に指輪をはずさせて王位を奪い、ソロモンになりすまして王座にすわる」よう命じた。

アスモダイはソロモンを呼び出し、鎖を外させることに成功するやいなやソロモン王の顔を打ち、指輪を奪い、その指輪を海に捨てた。(その指輪は魚に飲まれた)。

それからアスモダイはソロモンを1200マイル遠方に投げ飛ばし、完全にソロモンになりかわってしまう。

ソロモンは指輪を失ったので彼の知恵や栄光のすべては失われ、物乞いのような姿で国から国を渡り歩くこととなった。 「わたしはソロモン、エルサレムでイスラエルの王だった」と言うソロモンを誰もが嘲笑した。 そうしてソロモンは自分の罪のために諸国を放浪することになる。

好き放題するアスモダイ、バテ・シェバ(ソロモン実母)と性交しようとして正体を勘繰られる。

ソロモンになりかわったアスモダイは、王の妻のところを一人ずつ訪ねては彼女たちと寝た。あるとき、月経のさなかで嫌がるひとりの妻が「ソロモンさま、どうしてあなたはかつてのようにお振る舞いにならないのですか?」と不審がる者もいたが、それはあまり取り合われなかった。

しかしある時、 アスモダイはソロモンの実母であるバテシェバのもとに行って「母上、わたしはあなたと寝たいのです」と言い、母親をあきれさせた。 バテシェバはソロモンの様子がおかしいことに気づき、ソロモンの部下であった将軍ベナヤフーに相談すると、彼はそれがソロモン王ではなくアスモダイであることに気づき、 最近諸国を「自分はソロモンだ」と言いながら放浪している乞食がソロモン王であることに勘付いた。

ソロモン、アンモン人の応急で料理係になり、そこの王女ナアマ(ネアマ―)と結婚する。

3年すぎると、神はダビデゆえにソロモンを憐れみ、彼をアンモン人の都に連れ戻した。(これはダビデの家系の由来するアンモンの王の娘ネアマーのおかげだった) 。

ソロモンは、アンモンの王宮の調理人に気に入られ、付き人として雇われることになる。 ある日、ソロモンはアンモン王の夕食を作る。すると王がその料理を気に入り、王は料理人を解雇して見習いであったソロモンを任命した。

そうしてソロモンは料理人として働くうちにアンモンの王女ネアマー(ナアマ)に気に入られる。ネアマ―は彼との結婚を母親に相談するが、一介の料理人と結婚など父王がゆるすはずもなかった。

2人の結婚を認めたくないアンモン王は、 王女と料理人ソロモンを餓死間違いなしの砂漠に捨てるように命じる。

魚の腹から神名の指輪を見つけたソロモンはエルサレムに戻り、アスモダイを引きずり降ろす。

王女とソロモンはさまよい、海岸近くの村にたどり着き、そこで魚を買った。ネアマが魚の腹を開くとそこには、神の秘密名の彫られた指輪があった。指輪を手に入れたソロモンは、かつての力を回復し、彼はエルサレムにのぼった。 ちょうどアスモダイがバテシェバとの間で恥ずべきできごとが起こっているときに、ソロモンは到着した。

ベナヤフー将軍に、自分がソロモン王であること、いままでの経緯を話し、自分がソロモン王としての証拠としてかつて自分の戴冠式で起きた、限られた人しかしらないその状況を説明してみせた。 ベナヤフーはこれを認め、サンヘドリンの議員たちに、ソロモン王に成り代わっているアスモダイを玉座から下ろすように命じた。

アスモダイはしこたま打たれて殺されそうになったが、神は「ソロモンに罰を与えたのは神の意志だったので、アスモダイをこれ以上打ってはならない」と静止する。 ソロモンは玉座に返り咲き、かつての美しさと知恵を取り戻した。

アンモン王を呼び出す。

そうしてアンモンびとの王を呼び寄せ、 「なぜあなたは罪のない2人の人間の血を流したのか?」と問い詰めた。 アンモンびとの王は、「殺していない。砂漠に追放しただけで、彼らの消息はしらない」といった。 そこですぐにネアマーを呼び出し、アンモンの王に告げた。「わたしはあなたの前の料理人です。そして、あなたの娘さんがわたしの妻なのです」

補足

テクストはoseh fele 。タルムードとミドラシュが資料になっていると思われる。ダリウス王の玉座を簒奪する悪魔については似たようなペルシアの伝説がある。(中略)
私見によれば、それはソロモンの父、すなわちダビデがペリシテ人の間に滞在したとき、気がふれたか、気がふれたふりをした聖書物語の再話である。アスモダイがソロモンの王位にあるとき、悪魔的な力を行使したが、それはソロモン自身の破廉恥な振る舞いの投影であると思われる。彼は狡猾で、好色で、聖書が「民を鞭で痛めつけた」と言うように独裁的な君主だったので、彼の治世は多分ネロカリグラのそれと変わることがなかったろう。だが同時にわれわれはこの話を失墜、喪失、悲嘆、癒しの奇跡物語として読む事ができるし、実際、一方の解釈が他方の解釈を排除するものではない。

ユダヤの民話 出典について pp.ⅳ‐ⅴ
補足

oseh fele とは…

R. ジョセフ シャベタイ ファリによる物語集。(中略)

R. ジョセフ シャベタイ ファリは、タルムード学者でカバリストでした。彼はエルサレムで生まれ(1802年頃)、1842年頃にリヴォルノに行き、そこで1882年に亡くなりました。Rokev Aravot、Pirke Avot に関するアラビア語の解説、本文、十戒、および Piyyut bar Yohai (1849 年)。アンナと彼女の 7 人の息子の物語のアラビア語版 (1853 年) を含む、アヴの第 9 版のハフタラに関するアラビア語の解説、Shever Bat Ami。R. Farhi は、R. Isaac Farhi の Ma’aseh Avot も編集し、多数の注記を追加しました (1864 年)。Joseph Concio の Ma’agal Tov (1879 年)。

参考 https://www.virtualjudaica.com/Listing/Details/1258906/Oseh-Fele-R-Joseph-Shabbetai-Farhi-Livorno-1870

ユダヤ民話を読んでいると、タルムードやミドラシュのお話のピックアップも多く『こんな面白い話があるんだったらやっぱりタルムード読みたいな…』と思いました。これはそれらのさらなる再話と考えることができるので、元テキストはもっと”おもしろくない”感じの可能性もありますが、その差異を読み比べするのにも非常に興味があります。

うーん、『ユダヤ民話やタルムードの知恵』みたいな書籍は日本語で読めるだけ読んでみて、ヘブライ語もやっていこうかなぁ…(何年後になることやら)。

聖書における「ナアマ(ネアマ)」

聖書において「ネアマ―(ナアマ)」という言葉は2人の人名と1つの地名として用いられているようです。

「楽しみ」という意味。
1.レメクとツィラの間に産まれた娘でトバル・カインは兄(創世記4;22)。
2.アモン人の婦人でソロモンの妻となり、レハブアムを産んだ(Ⅰ列王記14:21,Ⅱ歴代誌12:13)
3.ヨブの友人の一人ツォファルの故郷で、常に「ナアマ人ツォファル」という表現で記されている(ヨブ記2:11,11:1,20:1)

引用:1985年「新聖書辞典」いのちのことば社 p.908

今回登場しているネアマーは「2」のネアマ―ですね。一応、聖書の該当箇所を引用しておきます。(口語訳)

そのころヤラベアムの子アビヤが病気になったので、

2 ヤラベアムは妻に言った、「立って姿を変え、ヤラベアムの妻であることの知られないようにしてシロへ行きなさい。わたしがこの民の王となることを、わたしに告げた預言者アヒヤがそこにいます。

3 パン十個と菓子数個および、みつ一びんを携えて彼のところへ行きなさい。彼はこの子がどうなるかをあなたに告げるでしょう」。

4 ヤラベアムの妻はそのようにして、立ってシロへ行き、アヒヤの家に着いたが、アヒヤは年老いたため、目がかすんで見ることができなかった。

5 しかし主はアヒヤに言われた、「ヤラベアムの妻が子供の事をあなたに尋ねるために来る。子供は病気だ。あなたは彼女にこうこう言わなければならない」。彼女は来るとき、他人を装っていた。

6 しかし彼女が戸口にはいってきたとき、アヒヤはその足音を聞いて言った、「ヤラベアムの妻よ、はいりなさい。なぜ、他人を装うのですか。わたしはあなたにきびしい事を告げるよう、命じられています。

7 行ってヤラベアムに言いなさい、『イスラエルの神、主はこう仰せられる、「わたしはあなたを民のうちからあげ、わたしの民イスラエルの上に立てて君とし、

8 国をダビデの家から裂き離して、それをあなたに与えたのに、あなたはわたしのしもべダビデが、わたしの命令を守って一心にわたしに従い、ただわたしの目にかなった事のみを行ったようにではなく、

9 あなたよりも先にいたすべての者にまさって悪をなし、行って自分のために他の神々と鋳た像を造り、わたしを怒らせ、わたしをうしろに捨て去った。

10 それゆえ、見よ、わたしはヤラベアムの家に災を下し、ヤラベアムに属する男は、イスラエルについて、つながれた者も、自由な者もことごとく断ち、人があくたを残りなく焼きつくすように、ヤラベアムの家を全く断ち滅ぼすであろう。

11 ヤラベアムに属する者は、町で死ぬ者を犬が食べ、野で死ぬ者を空の鳥が食べるであろう。主がこれを言われるのである」』。

12 あなたは立って、家へ帰りなさい。あなたの足が町にはいる時に、子どもは死にます。

13 そしてイスラエルは皆、彼のために悲しんで彼を葬るでしょう。ヤラベアムに属する者は、ただ彼だけ墓に葬られるでしょう。ヤラベアムの家のうちで、彼はイスラエルの神、主にむかって良い思いをいだいていたからです。

14 主はイスラエルの上にひとりの王を起されます。彼はその日ヤラベアムの家を断つでしょう。

15 その後主はイスラエルを撃って、水に揺らぐ葦のようにし、イスラエルを、その先祖に賜わったこの良い地から抜き去って、ユフラテ川の向こうに散らされるでしょう。彼らがアシラ像を造って主を怒らせたからです。

16 主はヤラベアムの罪のゆえに、すなわち彼がみずから犯し、またイスラエルに犯させたその罪のゆえにイスラエルを捨てられるでしょう」。

17 ヤラベアムの妻は立って去り、テルザへ行って、家の敷居をまたいだ時、子どもは死んだ。

18 イスラエルは皆彼を葬り、彼のために悲しんだ。主がそのしもべ預言者アヒヤによって言われた言葉のとおりである。

19 ヤラベアムのその他の事績、彼がどのように戦い、どのように世を治めたかは、イスラエルの王の歴代志の書にしるされている。

20 ヤラベアムが世を治めた日は二十二年であった。彼はその先祖と共に眠って、その子ナダブが代って王となった。

21 ソロモンの子レハベアムはユダで世を治めた。レハベアムは王となったとき四十一歳であったが、主がその名を置くために、イスラエルのすべての部族のうちから選ばれた町エルサレムで、十七年世を治めた。その母の名はナアマといってアンモンびとであった。

22 ユダの人々はその先祖の行ったすべての事にまさって、主の目の前に悪を行い、その犯した罪によって主の怒りを引き起した。

23 彼らもすべての高い丘の上と、すべての青木の下に、高き所と石の柱とアシラ像とを建てたからである。

24 その国にはまた神殿男娼たちがいた。彼らは主がイスラエルの人々の前から追い払われた国民のすべての憎むべき事をならい行った。

25 レハベアムの王の第五年にエジプトの王シシャクがエルサレムに攻め上ってきて、

26 主の宮の宝物と、王の宮殿の宝物を奪い去った。彼はそれをことごとく奪い去り、またソロモンの造った金の盾をみな奪い去った。

27 レハベアムはその代りに青銅の盾を造って、王の宮殿の門を守る侍衛長の手にわたした。

28 王が主の宮にはいるごとに、侍衛はそれを携え、また、それを侍衛のへやへ持ち帰った。

29 レハベアムのその他の事績と、彼がしたすべての事は、ユダの王の歴代志の書にしるされているではないか。

30 レハベアムとヤラベアムの間には絶えず戦争があった。

31 レハベアムはその先祖と共に眠って先祖と共にダビデの町に葬られた。その母の名はナアマといってアンモンびとであった。その子アビヤムが代って王となった。

1 レハベアムはその国が堅く立ち、強くなるに及んで、主のおきてを捨てた。イスラエルも皆彼にならった。

2 彼らがこのように主に向かって罪を犯したので、レハベアム王の五年にエジプトの王シシャクがエルサレムに攻め上ってきた。

3 その戦車は一千二百、騎兵は六万、また彼に従ってエジプトから来た民、すなわちリビアびと、スキびと、エチオピヤびとは無数であった。

4 シシャクはユダの要害の町々を取り、エルサレムに迫って来た。

5 そこで預言者シマヤは、レハベアムおよびシシャクのゆえに、エルサレムに集まったユダのつかさたちのもとにきて言った、「主はこう仰せられる、『あなたがたはわたしを捨てたので、わたしもあなたがたを捨ててシシャクにわたした』と」。

6 そこでイスラエルのつかさたち、および王はへりくだって、「主は正しい」と言った。

7 主は彼らのへりくだるのを見られたので、主の言葉がシマヤにのぞんで言った、「彼らがへりくだったから、わたしは彼らを滅ぼさないで、間もなく救を施す。わたしはシシャクの手によって、怒りをエルサレムに注ぐことをしない。

8 しかし彼らはシシャクのしもべになる。これは彼らがわたしに仕えることと、国々の王たちに仕えることとの相違を知るためである」。

9 エジプトの王シシャクはエルサレムに攻めのぼって、主の宮の宝物と、王の家の宝物とを奪い去った。すなわちそれらをことごとく奪い去り、またソロモンの造った金の盾をも奪い去った。

10 それでレハベアム王は、その代りに青銅の盾を造って、王の家の門を守る侍衛長たちの手に渡した。

11 王が主の宮にはいるごとに侍衛は来て、これを負い、またこれを侍衛のへやへ持って帰った。

12 レハベアムがへりくだったので主の怒りは彼を離れ、彼をことごとく滅ぼそうとはされなかった。またユダの事情もよくなった。

13 レハベアム王はエルサレムで自分の地位を確立し、世を治めた。すなわちレハベアムは四十一歳のとき位につき、十七年の間エルサレムで世を治めた。エルサレムは主がその名を置くためにイスラエルのすべての部族のうちから選ばれた町である。彼の母はアンモンの女で、名をナアマといった。

14 レハベアムは主を求めることに心を傾けないで、悪い事を行った。

15 レハベアムの始終の行為は、預言者シマヤおよび先見者イドの書にしるされているではないか。レハベアムとヤラベアムとの間には絶えず戦争があった。

16 レハベアムはその先祖たちと共に眠って、ダビデの町に葬られ、その子アビヤが彼に代って王となった。

タルムードを読みたいアナタに…

2020年代の世に、インターネットの海でヘブライ語を読む事を助けてくれているチャンネルがあるのでご紹介まで。私も毎週観ているはずなのに全然読めるようになってないのは御愛嬌(目から塩水が)