このコラムでは「異類婚姻譚」が原作の下敷きになっていると考えられるディズニーアニメ作品と、その伝承のあらすじを紹介していきます。
目次
はじめに

この段落では
・「ディズニー作品」の定義
・「異類婚姻譚」の定義
について記します。
「ディズニー作品」の定義
ウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオのなかの「長編アニメ映画」に該当する作品の中からピックアップしてみます…。
「異類婚姻譚」の定義
「異類婚姻譚」という言葉は、柳田國男が創出した民間説話のジャンル分析概念です。『異類求婚譚』『異類相婚譚』という用語の変遷を経て「異類婚姻譚」というところに落ち着いてはいる(※1)ように見えますが、この分析概念に課題がないわけではないようです(※2)。
定義は学者によって変遷している部分もあると筆者は認識しているので、2023年に出版された異類婚姻譚案内書に用いられている定義を紹介しておきます。
「動物をはじめとする人間以外の存在と人間が結婚する説話」(※3)
ということで、このコラムではこれに該当するお話が原作の下敷きになっていると考えられるウォルト・ディズニーアニメ作品を紹介してみます。(これより新しい入門書が登場して、その時あたらしい定義や用語が生まれていたらその時はその時で…)
なお、『異種族同士の恋愛が描かれるフィクション』のジャンル名としては「パラノーマルロマンス」という用語もあるのかもしれません。このコラムは『パラノーマルロマンスの奥にある異類婚姻譚を紹介していく』営みであると考えていただければと思います。
(※1)石井正己「現代に共鳴する昔話 異類婚・教科書・アジア」(三弥井書店, 2020年)
(※2)廣田龍平「異類/婚姻/境界/類縁」(「クィアの民俗学」収録,実生社 ,2023年)
(※3)川森博司「ツレが「ヒト」ではなかった 異類婚姻譚案内」(2023年,淡交社)
ディズニー作品における「異類婚姻譚」の例

この段落では
・「リトルマーメイド」
・「美女と野獣」
・「プリンセスと魔法のキス」
について紹介していきます。
「リトル・マーメイド(The Littele Mermaid)」~異類女房譚が源流にある物語
(ウィキペディア2024/6/6時点から引用)
海底の世界・アトランティカの16歳の人魚姫・アリエルは地上の世界に憧れており、秘密の場所に隠してある沈没船から集めた宝物達を眺めながら思いを馳せていた。ある日、海上を航海していた船に好奇心を抑えられず覗き込んで、同乗していた人間の王子・エリックに一目惚れしてしまう。しかし船はアリエルの目前で嵐に襲われて沈没し、船に取り残された飼い犬のマックスを助けに向かったエリックが海に投げ出されてしまった。エリックを抱えて必死に泳いだアリエルは、やっと辿り着いた浜辺で歌を口ずさみながら介抱しているうち、エリックの家令・グリムズビーがやって来る気配に気付いてすぐに姿を隠してしまう。朦朧としながらもアリエルの美しい歌声や顔を記憶したエリックもまた、アリエルに惹かれ再会を願うのであった。
父王のトリトンを始め周囲からの反対を受けながらますます地上への憧れやエリックへの恋心を募らせるアリエルに目を付けたのは、トリトンに追放されていた海の魔女・アースラだった。アースラはアリエルに「その美声と引き換えに3日間だけ人間にする」間に、「アリエルがエリックとキスを交わす」という賭けを持ち掛けた。賭けに負けた時は、アリエルの身柄は一切がアースラのものになってしまう。アースラは、アリエルの賭けを失敗させ、その身を取引材料としてトリトンに取って代わろうと企んだのだ。そうとは知らずにアースラと契約し、尾ひれを足に変えてアトランティカの掟を破り地上に赴くアリエル。再会したエリックの城に逗留し、交流を深めることは出来たが、アースラの手下たちが邪魔をしてキスするまでには至らない。さらにアリエルに惹かれてはいるものの、声が失われていた事で自身の恩人とは別人だと思い込んでしまったエリックは躊躇っていたのだった。そんなエリックの前に記憶の美声を響かせる美女・ヴァネッサが現われた。アースラが魔法とアリエルから奪った声を使い、ヴァネッサとして二人の仲を裂こうと地上へやって来たのだ。策に嵌まって惑わされてしまったエリックだったが、アリエルの親友の鯛のフランダー達の助力で正気を取り戻し、アリエルとの愛を誓うかに見えた。が、時既に遅く日没の船上で人魚に戻ってしまったアリエルはアースラに攫われ、アリエルを助けようとしたトリトンもアースラの策に嵌まり、王者の座を奪い取られてしまった。アリエル達、そして海の危機に、エリックは船を操り、アースラに挑んで行く。
王の力を得たアースラは海に嵐を起こし、アリエルとエリックを襲う。エリックは嵐で浮上した沈没船を操ってアースラに体当たりしてアースラを倒す。
気を失い浜辺に打ち上げられたエリック。それを見守るアリエル。トリトンは二人の深い愛に感銘し、魔法でアリエルの尾ひれを足に変える。人間になったアリエルは周囲の祝福を受け、エリックと船上で結婚式を挙げる。
【ディズニー「リトル・マーメイド」原作ををたどっていくと…】
ハンス・クリスチャン・アンデルセン「人魚姫」
↓
フケー「水妖記(ウンディーネ)」
↓
パラケルスス「妖精の書」
↙↓↘
…いくつかの「騎士シュタウフェンベルク」伝説…
(参考:須藤温子「婚礼に足ー騎士シュタウフェンベルク伝説とその周辺」『西洋文学に見る異類婚姻譚』〔2020年,小鳥遊書房〕p.66)
フケー「水妖記(ウンディーネ)」あらすじ

騎士フルトブラントは、とある人里離れた岬に住む老いた漁師のもとで、不思議な少女ウンディーネと出会いたちまち恋に落ちる。彼女と結婚した翌日、床の中でウンディーネは、「自分の正体は水の精であり、大水やその間の不思議な出来事も自分の仕業だった」と打ち明ける。フルトブラントは変らぬ愛を誓い、ウンディーネを妻として町へ連れ帰る。
町ではもともとフルトブラントのことを慕っていた貴婦人ベルタンダが彼を待っていた。フルトブラントがウンディーネを連れて帰ったことで彼女は失望する。そしてベルタルダの霊名日に、ウンディーネは祝いの席でベルタルダの本当の両親があの老いた漁師の夫妻であることを明かす。(これはウンディーネにとって良かれと思って行った行為だった)。ウンディーネの考えとは逆にベルタルダは激昂し、訪れた老夫妻に罵声を浴びせてしまう。
この出来事からベルタルダは居場所をなくし、フルトブラントは彼女と共に自分の城に引きこもってしまう。フルトブラントの心は次第にベルタルダのほうへ傾いていく。
ウンディーネはベルタルダの窮地を救うことで一時フルトブラントの情愛を取り戻すが、その後3人でウィーン旅行に行った際、ウンディーネの存在がもとで水の精から様々な悪戯を仕掛けられ、ついにフルトブラントは「水の上でウンディーネを叱ってはいけない」という精霊界の掟を破ってしまう。ウンディーネは掟に従い、嘆きながらフルトブラントのもとを去り、ドナウ川の水の中へ帰っていく。
ウンディーネを失ったフルトブラントは悲しみに暮れるが、やがてベルタルダへの愛がよみがえり彼女との再婚を決意するに至る。夢に現れて必死に懇願するウンディーネの努力もむなしく、フルトブラントはベルタルダと婚礼の式を挙げてしまい、ウンディーネは精霊界の掟に従いフルトブラントの命を奪わなければならなくなる。花嫁の閨(寝屋)に向かおうとするフルトブラントの前に白衣の女が不意に現れるが、それがウンディーネで、フルトブラントは彼女と口付けを交わしながらその腕の中で息絶える。
(参考:2024年6月10日時点のウィキペディア)
「美女と野獣(Beauty and the Beast)」~異類婿/異類聟譚が源流にある物語
(ウィキペディア2024/6/6時点から引用)
「美女と野獣」はガブリエル・シュザンヌ・ド・ヴィルヌーヴが、伝承や当時の流行していた文学様式を下敷きに創作した文学作品で、これの翻案バージョンをジャンヌ・マリー・ルプランス・ド・ボーモンが翻案&短縮して「子どもの雑誌」に掲載したことでヨーロッパ中に知られることとなりました。
【ディズニー「美女と野獣」原作ををたどっていくと…】
ジャンヌ・マリー・ルプランス・ド・ボーモン「美し姫と怪獣(La Belle et la Bête)」
↓
ガブリエル・シュザンヌ・ド・ヴィルヌーヴ「美女と野獣(La Belle et la Bête)」
↙↓↘
「アモールとプシュケー」の神話
&
さまざまな民間伝承(「カエルの王様」「豚王子」「ばら」etc…)
&
(当時流行した『妖精物語』や舞台演出の意識)
(参考:白川理恵「二つの『美女と野獣』――妖精物語とその驚異(メルヴェイユ)」『西洋文学に見る異類婚姻譚』〔2020年,小鳥遊書房〕pp.107-132
「アモールとプシューケ(ークピードーとプシュケー)」あらすじ

ある国に3人の美しい王女がいた。とくに末の王女プシューケーの美しさは美の女神ウェヌスをしのぐほどだった。しかし、人間が神を凌ぐことに怒ったウェヌスは、息子であるキューピッド(愛の神)に命じて、愛の弓矢を使ってぷしゅーけーが卑しい男と結ばれるように仕向けようとする。
しかし、キューピッドは誤って自分に矢を指してしまい、プシューケーを深く愛するようになってしまう。
プシューケーに求婚者が現れないことを心配した王と王妃は、アポロン神に伺いをたてる。アポロンの神託は「山の頂上に娘を置き、神々でさえ恐れるマムシのような悪人と結婚させよ」というものだった。
神託に従うプシューケーをゼピュロス(西風の神)が山頂から美しい宮殿へと運ぶ。その宮殿でプシューケーは歓待を受けるが、夫を名乗る宮殿の主人は毎晩寝所を共にしてもどうしても姿を見ることができない。宮殿に招かれてやってきた姉たちは、妹の豪華な生活に嫉妬し、「夫が姿を見せないのは大蛇だから」「寝てる間に殺してしまうほうがいい」と吹き込む。
姉たちの提案を実行しようとしたプシューケーが、寝所で眠る夫に蠟燭をかざすと、そこには神々しい寝姿のキューピッドが明かりに照らし出された。しかし、蝋燭が垂れたことでキューピッドは目を覚まし、妻の背信に気づいて怒る。そうしてその場を飛び去ってしまう。
そのあと、プシューケーはキューピッド探してさまざまな試練を乗り越える。しかし、その過程で美しさを失ってしまい『もうキューピッドには愛されない…』と絶望し、永遠の眠りにつく。そこから色々あって、キューピッドは眠るプシューケーのもとにたどり着き、くちづけをすることで彼女をは目を覚ます。そうして、プシューケーはゼウスのとりなしで神となり、キューピッドと結ばれて、一人の娘(喜びの女神)に恵まれる。
本来は人間である存在が、魔女に魔法をかけられたために異類の姿になっているとう設定は、ヨーロッパの伝承に共通する枠組みです。(川森博司「ツレがヒトではなかった異類婚姻譚案内」〔2023年,淡交社〕p.180)
「プリンセスと魔法のキス(The Princess and the Frog)」異類嫁+異類婿が源流にある
ニューオーリンズに住むティアナは、亡き父夢であった自分レストランを開くことを実現させる為に、レストランでアルバイトをして貯金に励んでいた。
ティアナの夢が実現するのが近いとある日、マルドニアの王子であるナヴィーン王子がティアナの住む街に来航し、ティアナの幼馴染・シャーロットの父が開催する仮装パーティーに招待されているという。ティアナは調理人として出席したが、ティアナがレストランを開こうとしていた空き家に先客の買い取り手が出てしまう。シャーロットに促され、渋々プリンセスのドレスを着ることになったティアナは、ナーバスになり思いふけっていると、一匹のカエルが人間の言葉を話し、自分に話しかけて来たのだ。当然驚くティアナ。
カエルは、自分がナヴィーン王子だと名乗る。悪い魔法使いドクター・ファシリエに促されるままに魔法をかけられてしまった。ナヴィーン王子の召使いであるローレンスは、彼の姿に成り代わり、シャーロットの父の財産を狙ってシャーロットに求婚する。ナヴィーンは人間に戻るためには「プリンセスとキスをすること」が条件だと言い、ティアナをプリンセスだと思い込み彼女にキスしてくれるようにせがむ。ティアナは躊躇の末キスをすることになったが、ナヴィーンの姿は戻らず、逆にティアナの姿がカエルに変わってしまった。
カエルの姿に変わってしまったティアナとナヴィーンは衝突し、反りが合わない。ジャングルに着いた2人は、人間と一緒に演奏することが夢の巨大なワニ・ルイスと出会い、ナヴィーンと意気投合。更に一番星をメスのホタルだと勘違いして恋しているホタル・レイ(レイモンド)とも出会い、かけられた魔法を解くことが出来るという尼僧・ママ・オーディの元を目指し、密猟者に狙われるなどピンチに見舞われるが、胸の内を語り合ったティアナとナヴィーンは料理とダンスをお互い教え合ったりと心惹かれていく。
そしてティアナたちはママ・オーディと出会い、人間に戻して貰うように頼むが、彼女は「望むものではなく、本当に必要なものは何か考えること」をティアナたちに教える。そして夜の12時までにシャーロットにキスして貰うことで人間に戻れるとママ・オーディは言う。ティアナたちはニューオリンズまでの船に乗り、ルイスは仮装と間違われ、人間と一緒にパレードでトランペットの演奏をする夢が実現する。
一方ナヴィーンはティアナを愛していると自覚し、ティアナにプロポーズをしようとするも、夢を語る彼女を前に自分の気持ちを押し込めようとするが、ファシリエの影によって捕らえられてしまう。そのことを知らず、ティアナはレイからナヴィーンが自分にプロポーズするつもりだったことを聞くと喜ぶが、結婚式のパレードの最中ナヴィーンの姿をしたローレンスとシャーロットが寄り添う姿を見てしまう。ショックを受けるティアナは、思わずレイに「エヴァンジェリーンはただの星」と言ってしまうが、レイは信じず、ナヴィーンがファシリエに捕われていることを知ると、呪いの力の源であるタリスマンをファシリエから奪い取り、ティアナに渡すが、ファシリエによって踏みつけられてしまう。
ティアナの元にファシリエが現れ、ティアナは夢のレストランの幻影を見せられ、父親が苦労していたことなどを思いださせ、ファシリエはティアナからタリスマンを取ろうとするが、ティアナは「本当に大切なものは愛だ」ということを自覚し、タリスマンを破壊する。ファシリエは呪いの対価としてブードゥの影の魔物たちに引き込まれ、自分の墓に取り込まれた。
ティアナはパレードに出席しているのがナヴィーンでないことを知り、「貴方と一緒でないと夢は実現しない」と告白し、ナヴィーンと気持ちを確かめ合う。シャーロットはその現場に立ち会い、ナヴィーンとは結婚しないことを決め、2人を祝福する。しかしレイがファシリエによって瀕死の状態であることを知り、レイはティアナとナヴィーンの気持ちが通じ合ったことを知ると息絶える。悲しみに暮れるティアナたちだったが、レイを水葬した後、夜空のエヴァンジェリーンの隣に、一つの星が輝いている所を見て感激する。
ティアナとナヴィーンはカエルの姿のままジャングルの中で結婚式を挙げ、キスをすると元の人間の姿に戻る。ティアナがナヴィーンと結婚したことによって、プリンセスとなったからである。ニューオリンズに戻ると、ティアナとナヴィーンは正式な結婚式を挙げ、2人で協力してレストランを設立し、「ティアナのお城」と名付ける。開いたレストランでは、ルイスは店のミュージシャンとして人間と一緒にトランペットの演奏をし、ティアナとナヴィーンは2つの星が輝く夜空の下で踊り明かすのであった。
(ウィキペディア2024/6/9時点 参考)
本来は人間である存在が、魔女に魔法をかけられたために異類の姿になっているとう設定は、ヨーロッパの伝承に共通する枠組みです。(川森博司「ツレがヒトではなかった異類婚姻譚案内」〔2023年,淡交社〕p.180)
この物語は、下敷きになっているのが「異類婚姻譚」と整理されてきた説話ではあるが、当人同士はお互い人間だと認識しながら蛙の姿に変身し、蛙同士で婚姻の覚悟を決め、最終的に人間に戻る。
レイとエヴァンジェリーンのエピソードも異類婚姻譚と呼べるかもしれないが、冒頭の「異類婚姻譚」の定義から外れるので、ここでは取り扱わないこととする。
検討ゾーン~アラジン実写版/魔法にかけられて/美女と野獣/塔の上のラプンツェル~

この段落では
・「アラジン」実写版に異類婚姻譚要素が付与されたかも?
・「魔法にかけられて」は異郷の者との婚姻譚?
・「美女と野獣」は異類婚姻譚なのか?
・「塔の上のラプンツェル」は異常誕生譚だが?
を検討していきます
「アラジン(ディズニー実写版)」に付与された『異類婿:転生婚姻型』の要素
ネタバレしています。この段落を飛ばしたい方はコチラをタップしてください。
ディズニー作品の「アラジン」は1990年のアニメ版と2019年の実写版とがあります。実写版では、アニメ版にはない要素がいくつか散見されましたが、ここで取り上げたいのは『ランプの魔人ジーニーの人間への転生と婚姻』の要素です。
船に乗って旅をしている家族。その父親が2人の子どもにアラジンの物語を聞かせることから始まる。
アグラバーの町で猿のアブーとともに暮らす貧しい青年アラジン。市場へ繰り出しては盗みを働いていた彼は、ある日、変装した王女ジャスミンと出会う。アラジンは侍女のふりをしたジャスミンと心を通わせるが、アブーが彼女の母の形見である腕輪を盗んだことで幻滅されてしまう。アラジンは腕輪を返すために王宮に忍び込み、ジャスミンとの再会を果たすが、衛兵に捕らえられる。国務大臣のジャファーは、ジャスミンが王女であることをアラジンに教え、チャンスを与えると言って、魔法の洞窟に入って魔法のランプを取ってくるよう命じる。
アブーとともに洞窟に入ったアラジンは、岩に挟まれていた魔法の絨毯を助け、ランプを取ることに成功するが、アブーが「ランプ以外の財宝に触ってはいけない」という掟を破って宝石に触れたことで、洞窟に閉じ込められてしまう。途方に暮れたアラジンだったが、絨毯の指示でランプをこすったところ、ランプの中から魔人ジーニーが出現。ジーニーはランプをこすりながら願い事を言えば3つかなえると言う。アラジンはジーニーの目をごまかして願い事を言ったふりをして魔法を使わせて洞窟から脱出すると、1つめの願いで架空の国「アバブワ」の王子・アリとして名前と服装を変え、ジャスミンのもとへと向かう。(ここまでウィキペディア)
大量の贈りものを持って王に謁見を申し出、ジャスミンに求婚したアリ王子(アラジン)だが、ジャスミンはいい顔をしていなかった。その夜招待されたパーティーでジャスミンと踊ろうとするも、あきれられてしまう。
しかし、アラジンはアリ王子として夜更けにバルコニーからジャスミンの部屋に入り、ジャスミンを説得し、魔法の絨毯に乗ってジャスミンを外の世界に連れ出す。
そうしてジャスミンはアリ王子に心を開く。それと同時にアグラバーの町で出会った「アラジン」とアリ王子が同一人物であることを見抜き、問い詰める。そこでアラジンは、自分が「本当は王子」だと偽ってしまう。
翌日、アラジンはジャファーに正体を見破られ、海の中に落とされてしまう、その救出に2つ目の願いごとを使うことになる。
アラジンは逆にジャファーこそ謀反を企てていると糾弾し、ジャファーを牢獄に入れるようにジャスミンと国王に申し出る。
しかし、そのあとアラジンは、ひそかに脱獄したジャファーに魔法のランプを盗まれてしまう。魔法のランプを手に入れたジャファーは、ジーニーの力でアグラバーの国王となる。ジャスミンたちの危機を察知して王宮に乗り込んだアラジンだったが、ジャスミンたちの前で実は王子ではないことを暴露されてしまう。そうしてジャファーの力で遠い雪山に飛ばされてしまう。
国王となったジャファーはジャスミンと結婚式を挙式しようとする。
雪山から生還したアラジンは、魔法の絨毯に乗ってアブーと共に挙式を阻止しようと王宮に乱入する。そして魔法のランプを奪い返すも、争奪戦に負ける。
しかし、アラジンは最強を望むジャファーに「お前はジーニーがいる限り一番強い存在ではない」とけしかけ、挑発されたジャファーはジーニーに「自分をジーニーにするように」願う。
そうしてジーニーになったジャファーだったが、主人のいない「魔人の住処はランプ」という法則により、ランプに閉じ込められてしまう(インコも道連れになる)
こうして、危機が去ったアグラバーで、ジーニーは「ジャスミンと結婚するために、最後の願いを使って王子になる」ようにアラジンに言う。しかしアラジンはそれを承諾せず、最後の願いを使って「ジーニーに自由を」と望む。
人間になったジーニーは、ジャスミンの侍女であるダリアと一緒に世界中をめぐると言う。
国王は、この一連の事件を受けて、国王の座をジャスミンに譲ると言い、「国王は法を変えることができる」と伝える。
ジャスミンと結婚の資格を失ったアラジンは王宮を去ろうとするも、ジャスミンに「国王の命令よ」と言われ呼び止められる。そうして二人は結ばれ、物語はエンディングに入る。
(筆:当コラムライターによる)
劇中では、まず中盤にてアラジンは「もしも願いが叶うなら、君なら何を望む?」とジーニーに尋ね、ジーニ-は「人間になりたい」と答えるシーンが挿入される。
そのあと、ジャスミンの侍女ダリアを気に入ったような描写が入り、ダリアもまんざらではなさそうな様子が描かれる。
終盤、アラジンは魔法のランプの最後の願いを使って、『ジーニーを自由に』と願う」。結果、ジーニーは人間になる。人間になったジーニーは、ダリアと結ばれ、娘と息子をもうけて旅をしながら暮らしているような描写が入る。
ランプの魔神が人間への転生→人間の女性との婚姻
なので、
異類の人間への転生→人間の女性と婚姻
という型の民話と共鳴していると認識しました。そして、福田晃氏がこういった要素を『転生婚姻譚』と呼んだことをうっすら認識している(福田晃「奄美文化を探る」p.126)ので、「検討」枠でチョイスしてみたいと思いました。この件についての詳細はまた別コラムにまとめたいと思っています。
【ディズニー「アラジン」原作ををたどっていくと…】
ディズニー実写版「アラジン」
↓
ディズニーアニメ版「アラジン」
↓
(千夜一夜物語)「アラジンと魔法のランプ」
(ハンナ・ディヤーブが、アントワーヌガランにアラビア伝承として語って聞かせた物語。アラビア語原典は見つかっていない)
「魔法にかけられて」(Enchanted)→異界(異郷)の者との婚姻?
(↑公式に「魔法にかけられて」そのもののトレーラーがなかったので、「魔法にかけられて2」のトレーラーです)
おとぎ話の世界アンダレーシアに住むジゼル姫はエドワード王子と出逢ってその日のうちに婚約する。しかし、王子の継母である悪の魔女ナリッサは自分が女王の座を奪われることを危惧し、ジゼル姫を「永遠の幸せなど存在しない世界」現代都市のニューヨークに追放してしまう。
大都会で路頭に迷ったジゼル姫は仕事帰りの弁護士ロバートと娘のモーガンに助けられる。ロバートとモーガンは浮世離れしたジゼル姫の言動に困惑するが、天真爛漫な彼女の人柄に触れ、次第に家族のように打ち解けてゆく。一方、エドワード王子と勇敢なリスのピップはジゼル姫を救い出すため現実の世界へ駆けつけるが、女王の手先ナサニエルの妨害によってなかなかジゼル姫を見つけることができない。
やがてジゼル姫は現実の世界での恋愛の仕方と魔法の国での“永遠の愛”との違いを知り、また次第にロバートに惹かれつつある自分に気づき、戸惑いを隠せなくなっていくのであった。
(ここまでウィキペディア2024年6月17日時点より引用)
最終的に、ジゼル姫はロバートと現実の世界で婚姻する。
そして、ロバートのもともとの恋人であるナンシー・トレメインは、エドワード王子と恋に落ち、おとぎの世界へ行って婚姻する。
川森博司「ツレがヒトではなかった異類婚姻譚案内」〔2023年,淡交社〕2章がまるまる「異界(異郷)」の者との婚姻 の解説に宛てられています。
【目次】
水界…「竜宮女房」「浦島太郎」「オシーンと常若の国」「海神別荘」「ウンディーネ」
地上にある異界…「木霊女房①(青柳の話)」「木霊女房②(三十三間堂棟由来)」「瓜姫物語」
天界…「天人女房」「竹取物語」「竹の子童子」「笛吹聟」
コレの類型として考えても面白いのかなあ~と思いました。
「美女と野獣」は結局人間同士の結婚だから異類婚姻譚でないのでは?という意見について…
「美女と野獣」は結局人間同士の結婚だから異類婚姻譚でないのでは?
…という意見を何度か目にしたことがあります。この点についてはいくつか問題がこんがらがっているように思うので、少々整理してみたいと思います。
●「異類婚姻譚」とは民間伝承(昔話・民話)のカテゴリ名であり、フィクション作品のカテゴリ名ではない。
●柳田國男は「異類婚姻譚」という用語を生み出したとき「ラベルエラベット(美女と野獣)」を指した。(『代表的な説話名がカテゴリ名として使用されたもの』ではある)(→詳細はコチラのウェブサイトにも 外部リンク)
●「美女と野獣」ヴィルヌーヴ版原作においては、後半でベルは結局半妖精半人間の子だと判明するので、(異類婿と異類女房の反転は起こるが)〈非人間と人間が縁を結ぼうとする〉という定義からは外れない。(→詳細はコチラのコラムにも)
●現代の日本の説話において、アニミズム的な異類婚姻譚もまた「当事者の方ほうは、相手を人間との婚姻だと思っている」のであり、じゃあこれは『異類婚姻譚』とよべるのか問題もある(→詳細はコチラのコラムにも)
少なくとも「美女と野獣」と呼びうる作品や説話群を『異類婚姻譚』とカテゴライズしてよいか、という問題は日本語文化圏固有の問題になるのではないかと思います。
つまり、「美女と野獣は人間同士の結婚だから異類婚姻譚ではない」というのが通説になる未来を紡ぐのはアナタかもしれない…。応援しています。
「ラプンツェル」は異常誕生譚がベースにある…が…
「異常誕生譚」のはじまりは、
①人間が、子にめぐまれないことを気に病み神仏に祈願、のち懐妊(例:「豚王子」「田螺息子」)
②異類と人間の生殖行為、のち懐妊(例:「熊の子ジャン」「鬼の子小綱」)
③太陽の光が差して懐妊(例「」「」)
みたいなパターンがある…と思われます。(このあたりはまだ調べてないのでアテにしないでください…)
②の場合は異類婚姻要素があるため、説話研究書などでも『異類婚姻譚』の例として紹介されると認識しています。
けれども、伝承におけるラプンツェルの出生は、少なくとも②ではない…けれどサムネイルには入れてしまいました(異常誕生譚も異類婚姻譚も似たようなもんやろ~!という発狂のもと)。
すみません。サムネは見なかったことにしてください。
参考文献
異類婚姻譚雑語りとキリスト教disは近接しているが、一神教に帰依してない人たちが怒ってくれているので慰められてる
シンデレラの男性版は日本以外にもありまぁす!「少年版サンドリヨン/灰坊太郎/へエブラ」類話あらすじ4選
ルンペルシュティルツヒェン・トムティットトット系昔話10選あらすじ&教訓など紹介していく【小人の名前一覧マップ付】
色んな民話を1~3分で紹介した動画作ってます。
色んな民話を1~3分であらすじにして紹介した動画作っています。異類婚姻譚もけっこう頻度高めに紹介しています。あんまり奮わないのでこのままだと企画中止になってしまう…。興味あったらチャンネル登録などお願いいたします。





